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ハブ空港・2 「ハブ空港」=「大空港」? [├雑談]

「ハブ・システム」の誕生

前記事では日本の国内線の現状のことを書きました。

今回はこの記事全部を使って「ハブ・システム」のことを書きます。

で、次回の記事で日本でこの「ハブ・システム」を使えないか?

という記事をアップします。

 

米国で、とあるビジネススクールの大学生が従来とまったく異なる航空輸送システムを考案しました。

彼はその概念をレポートにまとめて自信満々提出したのですが、結果はなんとC評価。

頭にきた大学生は自説の正しさを立証するために運送会社を立ち上げます。

そして1973年、テネシー州メンフィス国際空港を拠点に米国内の25都市間で航空貨物輸送を開始しました。

この会社こそ、今や684機もの自社機を保有する世界最大の総合航空貨物輸送会社、「フェデックス」。

C評価を受けたレポートは現在も本社に飾ってあるのだそうです。

レポートの題名は、「ハブ・システムによる運送業の効率化」。

今日よく聞かれるようになった「ハブ空港」とか「ハブ&スポーク」という言葉は、ここから始まりました。

フェデックスの大成功に目を付けたアメリカの民間航空会社もこのハブ・システムを導入し、

米国国内線の運航形態は劇的に変化しました。

 

ところで、「ハブ空港って何?」と問われたら、何と説明しますか?

一般的に「ハブ空港」と言えば、「路線の集中する大空港」というイメージではないでしょうか。

後述しますが、これは決して間違いではありません。

しかし、 「ハブ・システム」が登場する以前から、とっくに「路線の集中する大空港」はありました。

そして「ハブ・システム」は従来の形態に対抗し、より効率的な手段として考案されたものです。

ですから厳密に言うと、「ハブ空港」=「大空港」ではありません。

では従来からある大空港と、彼が考案した「ハブ空港」は一体何が違うのか??

というのが今回の記事です。

 

「ハブ・システム」の運用

彼が考案し、実現させた「ハブ・システム」、どんなものかと言うと、

テネシー州メンフィス国際空港を「ハブ空港」に設定して効率的な運送を行い、

国内主要都市への翌日配達サービスを可能にしました。

具体的には、各地で集荷を行い、その荷物を約70機のヒコーキで「ハブ空港」に午後10時から午前2時までの4時間に一斉に集約します。

「ハブ空港」に集められた約150万個の荷物はただちに目的地ごとに仕分けられます。

荷物の積み替えを終えたヒコーキは、70分後に再び一斉に全米の各空港に飛んで行きます。
(資料は2000年のもの)

イメージを図にするとこんな感じです↓

 

ハブ3.png

各空港からハブ空港に一斉にヒコーキが集まって…

 

ハブ5.png

ただ今荷物の積み替え中~。

 

ハブ4.png

積み替えが済んだら一斉に目的地へ。

こんな感じです。

 

「ハブ・システム」と比較するために、例えば全ての空港に直行便を引くと、こんな感じ↓

ハブ6.png

たった6空港でもこんなにたくさんの路線が必要になります。


 

ハブ2.png

「ハブ・システム」ならば路線はたったこれだけ。

それぞれに必要な路線数を求めるには簡単な公式があり、

全ての空港に直行便を引く場合:N(N-1)÷2
ハブ・システムの場合:N-1
(N=空港の数)

で出すことができます。

この公式を使うと、上図の6空港の場合に必要な路線数はそれぞれ、15と5になります。

仮に25の空港をネットする場合、

全ての空港に直行便を引くと、路線数は300必要なのに対し、ハブ・システムの場合はたった24で済みます。

わざわざこんな計算をするまでもなく図を見比べれば一目瞭然ですが、

必要な路線数にかなり開きができますね。

全ての空港に路線を引いた場合、荷物の積み替えなしで移動できて非常に便利なのですが、

反面たくさんのヒコーキが必要になり、1便当たりの荷物は非常に少なくなります。

「25都市に翌日配達」と謳っている以上、需要が少ないからといって簡単に路線廃止もできません。

料金をうんと上げるか、維持代替手段を確保するか、いっそのことサービス都市から外してしまうか。ということになります。

対する「ハブ・システム」の方は、限られたパイロット、ヒコーキで就航先を飛躍的に増やすことができます。

…ヒコーキだけに。

この方式により、大都市同士のみならず全米のどこからどこへ移動するにも、

コストと移動時間を飛躍的に減少させることができました。

低コストで全米ネットが可能となり、こうしてあの広大な米国で(多くの人が利用可能な料金で)翌朝配達が可能になりました。

 

「ハブ空港」の利用

前述の通り、やがてこのハブ・システムを米国の他の民間航空会社も導入するようになります。

一例として、自分がハブ空港で乗り換えをして目的の空港に行くところを想像してみてください。

地元の空港からヒコーキに乗ってハブ空港に到着しました。

ここで乗り換えをして最終目的地の空港に向かうのですが、

「次のヒコーキの出発は7時間後」とかだったら相当嫌ですよね?

鉄道やバスなど他の交通機関でもまったく同様ですが、乗り換えのロスタイムは最小限に留めて

少しでも早く目的地に着きたいものです(一部の特殊な人たちを除く)。

 

航空大国アメリカでは、例えばアメリカン航空はダラス空港をハブ空港に設定し、

ダラスから全米すべての都市に路線を引いています。

しかもすごいのは、単に「すべての都市に引いている」というだけではありません。

全米各都市から一斉にダラスにヒコーキが到着、

それから1時間後、再び全米各都市に一斉に飛び立っていきます。
(乗客はこの1時間の間に乗り換える)

こうしたピークが朝昼夜と3回あり、

この時間帯ダラス空港はアメリカン航空のヒコーキで埋め尽くされます。

こうすれば、全米どの都市からでも1度の乗り継ぎで、

しかも待ち時間もそれほど気にすることなく好きな都市に行くことができます。

そして空港自体も乗り換えに便利な作りになっており、

7本の滑走路と4つのターミナルにより、短時間に集中する乗客に対応できるようになっています。

ユナイテッド、デルタといった大手も同様の方式を採用しており、

米国内にはこういう巨大ハブ空港がゴロゴロあります。

ところで蛇足になりますが、米サウス・ウエストはこの「ハブ・システム」を採用していません。

大手によるハブ・システムの間隙を突く形で2点間輸送(ポイント・ツー・ポイント)を主体としており、

高効率、低コスト、国内線のみで旅客数世界一の座に輝きました。

米国内に限っても、「ハブ・システム」は決して万能ではないということですね。

 

「大空港」と「ハブ空港」

では話を戻して、 従来からある大空港と、アメリカで誕生した「ハブ空港」の違いは何でしょうか?

どちらも「路線の集中する空港」には違いないのですが、

従来の大空港との違いを端的に言うならば、「ハブ・システムのために特化した空港」ということであり、

「乗り継ぎを考慮した空港」ということになります。

「ハブ・システム」のために、短時間での乗り継ぎに便利なターミナルが必要です。

「ハブ・システム」のために、短時間での乗り継ぎで好きな都市に行けるよう、建物、滑走路に一定の処理能力が必要です。

しかし空港施設を整えただけではダメで、航空会社が「ここを我が社のハブ空港にしよう」と決め、

自社の路線をその空港に集中させ、しかも短時間の乗り継ぎに特化したヒコーキの動かし方をしてくれなくてはなりません。

こうして空港と航空会社がセットになって初めて「ハブ空港」になります。

 

冒頭で述べた通り、「ハブ・システム」は従来の航空輸送形態へのカウンターなのですから、

そうした生い立ちと、特殊な運用方法を考えると、「ハブ空港」は必ずしも「大空港」と同義ではありません。

しかしその後この「ハブ・システム」は、国際線でも使われるようになり、

「ハブ空港」という言葉の意味が広がりを持つようになりました。

ここまで書いてきた米国で運用されている方式を「米国の国内ハブ」、

国際線の集中する空港のことを「国際ハブ」と区別したりします。

さらに現在では広義として「路線の集中する空港=ハブ空港」という使われ方が定着していますし、

路線図を見れば、大空港は確かにいろんな航空会社の路線が集中する「ハブ&スポーク」の形になってます。

ということで、「大空港=ハブ空港」という用法は決して間違いではなく、現在ではむしろこちらの方が一般的でしょう。

「ハブっていうのはそもそもさぁ…」と語ってしまう人の方がごく一部に限られるはずです。

でも米国で誕生した本来の「ハブ・システム」は、日本の国内線にいろいろ活かせる可能性があり、

次の記事でそのことを書くので書きました。

それはともかく、運用者、利用者双方の便益のために

こんな大がかりなシステムを構築して実際に動かしてしまうところがいかにもアメリカらしい気がします。

 

(続きます)

この記事の資料:
「航空の規制緩和」戸崎肇
「現代の航空輸送」中条潮
「航空業界の動向とカラクリがよ~くわかる本」吉田力
「航空大競争」、「生まれ変わる首都圏の空港」、「21世紀の航空新常識」杉浦一樹 


コメント(13)  トラックバック(0) 
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コメント 13

tooshiba

なるほど。
ということは、たとえば信州松本空港で、貨物や旅客を「いっせーのせ!」をやれば、そこがハブ空港になるんですね。

羽田や成田、その他ドル箱路線の空港は、どこも容量的に(特に羽田は管制エリアが原因で)無理そうですね。

どうせなら着陸しやすいところが良いでしょうね。
富士山静岡とか、仙台とかはどうだろうか。
by tooshiba (2010-11-15 11:47) 

Takashi

フェデックスの生い立ち、知りませんでした。こういう精神が好きです^^
by Takashi (2010-11-15 12:40) 

鹿児島のこういち

なぁ~るほどぉ、効率化を追求した形ですね(^O^)/
しかし、日本で実施しようとすると、ハブ空港の拠点になる地域が巨大地震や災害、またはテロなどが起こると、全ての路線がパンクって事になりはしないだろうかしら?
日本に必要なのは、国際線化したハブ空港だけなような気がしてきましたよ(^O^)

ちなみに、鹿児島市内の実家から車に乗って、高速使っても溝辺空港まで約40分。中央駅までなら15分。
新幹線に行っちゃうだろうなぁf^_^;
by 鹿児島のこういち (2010-11-15 12:48) 

masa

よくわかりました。
資料となる本もたくさん読まれたのですね。
by masa (2010-11-15 18:35) 

sak

貨物のハブって絶対いいと思うなぁ
地方と羽田って絶対流通多いだろうけれど
もしかしたら地方と地方を結ぶ専用のハブ空港があってもいいかも
って思うのは素人だからかな(^^
でも人はどうだろ...
たとえば関西方麺から北海道とか東北・北陸行こうとすれば
ほとんどの地域は羽田経由で乗り継ぎ割引とかあるけど
直行便が飛んでいた時よりはやっぱり割高になってるし...
ほんとの意味での効率化が図られて運賃も安くなれば嬉しいけど



by sak (2010-11-15 20:52) 

とり

皆様 コメント、nice! ありがとうございます。

■tooshibaさん
>「いっせーのせ!」
うおお、すごい。この記事の情報から既に一歩先を行ってますね(@Д@)
そうです。その通りです。
tooshibaさんの発想には毎度驚かされてます。ハイ。

■Takashiさん
これがアメリカンドリームってやつなんでしょうか^^

■鹿児島のこういちさん
国内線に狭義のハブ空港はありませんけど、もしも今羽田がストップしたら大変なことになりますよね。
羽田一極集中をもう少しなんとかできないか。というのが最後の記事の趣旨です。
今の鹿児島空港はちょっと市内から遠いですよね^^;
鴨池にあったら利便性は最高だったのですけど。。。

■masaさん
「わかった」と言って頂けると正直ホッとします。m(_ _)m
本はですね、必要なところだけチョコチョコと確認しただけなんですよ^^;
オイラ子供の頃から活字を読むのが苦手で苦手で…。(〃´o`)=3

■sakさん
日本で地方と地方を結ぶ貨物輸送のハブ空港ですか。。。
確かにできるといいですね。景気がもっとよくなるとそういう話も広がるんでしょうけども。
>割高になってる
貴重な実例をありがとうございますm(_ _)m
「ハブで効率的な運用を」という発想がないからではないかと思います。
関西と羽田と、両方で高い空港使用料払って、それがチケット代になるから当然ですよね。
by とり (2010-11-16 17:56) 

OILMAN

こんにちは。
ハブシステムの意味が大変良くわかりました。
ということはたしかに大空港である必要もなく、都心である必要もないんですね。
だって乗り換え専門なら、例えば山の中や関空のように町から離れていても飛行機がたくさん離着陸ができる場所なら可能ですよね。
実際に日本を考えると、国内ハブ空港の役割は羽田が全て引き受けているような気がしますね。
by OILMAN (2010-11-16 20:28) 

an-kazu

思えば、
 ダラスからアメリカンのMD-11で帰ってきたっけ・・・

また一つ、勉強になりましたm(_ _)m
by an-kazu (2010-11-16 21:53) 

とり

■OILMANさん こんにちは。
この記事でそこまで推論しますか!(☆Д☆)
すごいっす。。。

■an-kazuさん
>ダラスからアメリカンの
その組み合わせは必然だったわけですね~。
MD-11…いいなぁ。
by とり (2010-11-17 06:39) 

me-co

ううむ(--)
やっぱり判りやすい!ナルホド!!
ところで、Cをつけた人(又は組織)
がどうなったのかも気になります(穴があったら入りたい)
by me-co (2010-11-20 20:52) 

とり

■me-coさん
分かりやすいと言っていただけるとホッとします。
>Cをつけた人
オイラも興味あるところですが、この件で面白いこと仰る方がいました。
フェデックス創業者はC判定つけた人に感謝すべきかもしれない。
なぜなら高評価だったらそこで満足してしまい、事業を興すことはなかったかもしれないのだから。
by とり (2010-11-21 06:39) 

コスト

ダラスの一日3回のピークを持ってくるシステムは、すごいですね
ほんとにハブ空港ですし、ちゃんとそれを一つの航空会社がやってるところが
実に戦略的ですね。アメリカと日本の事情もあるにしても、
日本のように全部お上が許認可で路線を決めるやり方とは次元が違いますねー

by コスト (2010-11-21 23:23) 

とり

■コストさん
アメリカは使用する人間優先、「道具やシステムは利用者のためにあるもの」という思考が強いように思います。
1つの理想ですね。
by とり (2010-11-23 10:37) 

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