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ハブ空港・1 国内線ここまでの話 [├雑談]

アメリカとの違い

毎度そのスジの方には分かり切った話をぐだぐだと。

昨年オバマ大統領が「高速鉄道網計画」を取り上げた通り、アメリカは鉄道が未発達で、

広大な国土での移動には航空に頼らざるを得ないという側面があります。

当ブログに時々超マニアック専門的なコメントをくださるT氏はアメリカを鉄路横断したことがあり、

その時の様子を少し教えてもらったのですが、それは日本での鉄道旅行とは異次元の「冒険旅行」の世界でした。

Wikiの「アムトラック」など見てみると、米国の鉄道事情には驚かされます。

低コストでネットワークを構築できる「ハブ・システム」は、こうしたアメリカの国内事情にピッタリであると言えるでしょう。

対する日本は、米国と比較して国土は非常に狭く、着々と高速鉄道網が完成しつつあります。

新幹線の整備と共に競合する短・中距離路線では空路が衰退・滅亡していったという悲しい経緯を見ても、

日本では国内全域に航空ネットワークを張り巡らす必要はもうありません。

米国内で大々的に導入されている「ハブ・システム」は優れた運送方式なのですが、必ずしも万能ではありません。

いくつか短所もあり、そのまま日本の国内線に持ち込むには無理があります。
(ハブ・システムのことは次の記事で、日本とハブのことは次の次の記事でぐだぐだ書きます)

 

戦後の国内航空政策

戦後再開した日本の航空輸送政策は、首都圏と関西圏の空港を優先的に整備し、

この2点と地方空港と結ぶ「二眼レフ」方式で始まりました。

限られた時間と予算で航空輸送網を充実させるには、これは非常に効果的な方法でした。

「拠点空港を設定し、低コストでネットワークを充実させる」というやり方は、「ハブ・システム」の利点そのものです。

しかし、 首都圏と関西圏に路線が極端に集中するという状況は現在に至るまでずっと続いてしまいました。

具体的に数字を挙げますと、「国内航空旅客輸送の動向」という資料(下記リンク参照)の最新の平成18年度のデータでは

国内線利用者のうち、羽田を利用する人の割合は64.1%、そこに関空と伊丹を加えると77.9%になり、

東京/関西を利用しない利用者はたった22.2%に留まっています。

国内線利用者の8割弱が東京/関西の空港を使っているわけで、

いかに日本の国内線がこの2点に集中しているかをよく表していますね。

こうして、特に羽田の慢性的なパンク状態がずっと続いてきましたが、

この状況が一気に改善されるかに見える出来事がありました。

 

D滑走路運用開始

2010年10月に羽田D滑走路が供用開始し、今後発着数が年間30万回から41万回へと11万回増えることになりました。

「国際線は成田、国内線は羽田」の原則から国交省はこの増加分について、

「基本的に国内線用に使用し、当面利用がないと見込まれる3万回分を国際線に使用する。

ただしその範囲は羽田発着国内線の最長路線と同じ1,947kmとする」。

としてきました。

増加分のほとんどを国内線の増便に回し、国際線はごく僅か、しかも短距離路線に限定したのです。 

地方空港には、「羽田に路線就航したい。増便したい」。と希望するところが多いのですが、

これまで慢性的な発着枠の不足からそれができませんでした。

こうした現状が一気に改善されることになります。

いよいよ日本も欧米のように小/中型機による多頻度運航が実現すると考えられていました。

 

ところがその後国交省はこの方針を大きく転換します。

今回の羽田再拡張でさんざん報道されましたが、近隣諸国の巨大空港への強い危機感から、

国土交通省は2010年4月、国際線発着枠を2013年度以降、年間9万回に拡大する方針を発表しました。

それぞれに振り向け可能な発着枠が、

国内線8万回、国際線3万回 だったのが、

国内線2万回、国際線9万回 となりました。

比率が完全に逆転(逆転以上)してしまい、長年羽田増便を待ち続けてきた地方空港からは不満の声が上がりました。

 

国内線の現状

1989年に当時の国内航空大手三社は、

「日本の航空ネットワークに必要な空港はすでに揃った。

空港整備特別会計による新規の地方空港の建設は運賃の大幅値上げにつながるのでやめて欲しい」

という要望書を提出しました。

既に二十年以上前に大手三社がそろって「もうこれ以上空港は要らない!」と主張したわけなのですが、

その後も地方空港の建設、拡張は続々と続けられました。

こうして国内にはますます立派な地方空港が増えていったのですが、

日本の国内線は、相変わらず羽田だけが極端に大忙しで、

それ以外の空港は残念ながらその立派で大きな施設を持て余し気味のところが多く、

近隣国のハブの末端空港として名ばかりの「国際空港」だったりする例も少なくありません。

全国に点在する約百の空港は、旅客数、貨物取扱量と比較して、あまりに施設が立派過ぎる例が多いです。

国内の空港事情がなんでこんな歪になってしまったのか、理由はいくつかありますが、

1つにアメリカとの約束があります。

日本はアメリカと国内に滑走路をたくさん建設するという約束をしたため、

安く、手っ取り早く数値目標を達成するために地方空港の滑走路を続々と延伸しました。

そしてもう1つに前述の羽田の慢性的なパンク状態があります。

例えばある地方空港には、1日に500人羽田に飛びたい人がいるとします。

利用者の側からすれば、100人乗りのヒコーキが5回に分けて飛んでくれれば便利なのですが、

羽田は慢性的にパンク状態です。

それでジャンボで500人を一度に運んでしまおう。そんな感じです。

こうして国内線にジャンボがうようよしているという、世界でも類を見ない特異な運用がこれまで長いこと続いてきました。

 

地方の空港に行くと、その空港から747が飛び立つ看板を時々見かけることがあります。

「羽田便実現を!」とか「羽田便増便の早期実現!」という文字が踊っていたりします。

747の看板に象徴されるように、空港推進派の、

「どうせ作るなら大型機も飛べる立派な空港を!」という気持ちが強く働くのかもしれませんが、

現実問題として羽田に飛ばすには中/大型機で地元の需要を一気に運ばざるを得ず、

そのためにはそこそこの規模の施設と長い滑走路が必要です。

小/中型機用のこぢんまりとした空港を作り、需要には便数の調整で対応するのが堅実なやり方だと

誰もが分かっていても羽田の発着枠の関係でそれができません。

そして1日に1,2回、羽田と関西にヒコーキが飛んだら、後は開店休業状態という…。

特に北海道、東北にはそういう例が多いです。

 

地方空港には、駐車場無料にしている所が結構あります。

駐車料金を気にせずに自宅や会社から車で直接空港に乗り付けられるのは、特に地方ではすごく便利なのですが、

車を駐車場におきっぱなので、必ずヒコーキで戻ってこなければなりません。

そして駐車料金を取らない空港に限って羽田直行便が1日たったの1,2便だったりします。

これでは旅程に大きな支障となり、「それなら他の交通機関で往復割引使うか」ということになってしまいます。

大型機が日に1度羽田に飛ぶよりも、小型機がせめて数回飛んでくれた方がずっと利用度は上がって

それに伴って「それならヒコーキにするか」と考える人も増えるはずなのですが。

今回の羽田再拡張で増加した発着枠を大幅に国際線に振り向けるという使い方、個人的には正しい方向だと思います。

しかし、国内線発着枠の多少の増加と共に

新幹線の延伸、人口の減少で国内線の利用者数は今後減少傾向が見込まれるとはいえ、

羽田国内線のパンク状態の方は、今後も似たり寄ったりの状態が続くことになります。

 

(続きます)

国内航空旅客輸送の動向      

この記事の資料:
「航空の規制緩和」戸崎肇
「現代の航空輸送」中条潮
「航空業界の動向とカラクリがよ~くわかる本」吉田力
「航空大競争」、「生まれ変わる首都圏の空港」、「21世紀の航空新常識」杉浦一樹


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コメント 10

sak

日本の空の事情、いろいろ大変そうですね
個人的にはどんどん発達して
地方から地方へも行けるようになればって思うけど...
ここ数年は大阪関係からの地方路線も廃止になったり季節運航になったりで
羽田を経由して行かなければならなくなってきてるし...
確かに以前冬の関空→女満別とか乗った時
数人しか乗っていないこともあったけど
九州新幹線が全然開通しちゃうと九州方面への便も減っちゃったりして
羽田の国内線パンク状態に対して関西方面は減少がはじまるのかな
by sak (2010-11-14 09:38) 

おろ・おろし

先日、地元の空港(岡山)に行って、愕然としたのは
国内線が、東京便以外に、沖縄便だけになっていたこと。

JASの当時にあった仙台便はとっくに廃止、
宮崎便もだいぶ前になくなり、
今回のJAL危機で、鹿児島便が廃止になり、
ANAの札幌便も、昨年より季節運航に格下げされ、11月からは飛ばない・・・。

一方、国際線は、
香港便は、就航早々に休止されたものの、
上海・大連経由の北京・ソウル・グアムが定期便であります。

チャーター便では、ベトナムやハワイやヨーロッパにも飛んでます。

何年か前には、ボージョレヌーボーを積んだロシア機が飛んできたことも
あります。

ご指摘のように、神戸震災の時は、東京便にはB747も就航していました。

駐車場も今後一部有料化することになっていますが、
岡山空港を拡張したことも、
岡山県の財政悪化の原因の一つでしょう。

高速道路で約1時間の範囲に、広島・高松があり
2時間かければ、神戸・大阪伊丹そして米子あたりにも・・・。

ただ仕事の関係で、東京に行くときは、重宝しています。
(料金的にも、新幹線とひけはとらないだけに。。。)
by おろ・おろし (2010-11-14 12:16) 

me-co

運輸政策と言うのは、ホント水物なんですねー
(@Д@;)変遷たどれば目まぐるしい!=よーく判る内容です。
・・・空港が無い、海も無い、人々の認知すらない(--;)09人には、あまり関係の無い、地方空港云々の問題ですが、以前住んでいた市内にあった06空港の滑走路延長⇒今やお寒い発着便数とか、いずれ残るのは莫大な返済不能の借金だろうなー=空港なんて無くてよかったのかもかも・・・と思いました。
○字●事ネタのように08さんと張り合わなくても別にいいですわ。
・・・えー長文ご苦労様ですvv
by me-co (2010-11-14 12:52) 

春分

とりあえず続きを読んでからかなぁ。

by 春分 (2010-11-14 18:27) 

鹿児島のこういち

アメリカとの約束かぁ、知らなかった(^O^)日本に飛行場たくさん造っても、アメリカから直接その空港には行かないのにね、アメリカと同じようにに出来ると思ったのでしょうか?この狭い日本に(^O^)それとも、極東紛争が勃発したさいの在米軍の緊急滑走路にでもしようと考えたのですかねぇ(。-`ω-)ンー
by 鹿児島のこういち (2010-11-15 06:27) 

とり

皆様 コメント、nice! ありがとうございます。

■sakさん
関空をどうすれば活かせるのか。すごく難しいですね。
九州新幹線、仰るように関西にとっては逆風でしょうね。
パンク状態の羽田、成田と接続をよくして、空いている関空に補完させようとすると、
かえって客はそちらに吸い取られるのだそうですね。
採算度外視で空港使用料を大胆に下げるとかしか思いつきません。
便利なターミナルなんですけどね~。

■おろ・おろしさん
岡山空港、そんな厳しい状況になっているとは知りませんでした。
ものの本によりますと、大手は羽田便と一緒に「抱き合わせ」で不採算路線も押しつけられているのだから、
最初から不採算路線にやる気がない。経営が厳しくなると切られるのは当たり前だ。
ところが最初から身の丈に合った経営をする気のあるコミューター会社が運用を始めると、経営的にも、
利便性の面でも以前より向上するという例は米国にたくさんあるし、国内でも数例ある。
だそうです。そんな会社が岡山にも現れるといいですね。

■me-coさん
>水物
それは確かに思いました。
周囲の状況も刻々変わっていきますからね。
超楽観的な需要予測で空港作っても、それで終わりでなくてその後ずっと空港は残るんですよね。
当時の市長さんが責任とって最後まで面倒みてくれるならいいんですけども。

■春分さん
忌憚のない鋭いご意見お待ちしておりますm(_ _)m

■鹿児島のこういちさん
オイラもこれ、今回初めて知ってビックリだったんですよ。
1990年の日米構造協議で、米国は日本経済の輸出ドライブを止めるために国内での社会資本の充実を迫り、
日本は「先進国並みの空港整備」を約束し、数値目標まで定め、地方空港をどんどん延伸したのだそうです。
えげつない世界ですね(@Д@)
by とり (2010-11-15 07:12) 

tooshiba

狭ーい、小っちゃーいニッポンに「おらと同じようにしる!」とアメリカさんに言われて、(ついでに土建業界からの要求もあって、)「ほいほいと」空港を作ってみた。
作ったからには便利にしたい。
だから「大きい飛行機を飛ばせ、いっぱい飛ばせ」と言う。

でも、、、各空港にジャンボいっぱいのお客さんなんて、いるのかしら?
自治体が補助金を出して(あるいはチケットを市民に配って?)まで、無理矢理乗ってもらって実績作りなんてばかげたことをしているわけでしょう。

まあ、小っちゃーい国土に合わせてMRJがちょこちょこ飛ぶ。
そんなスリム化こそが衰えゆく我が国の将来の身の丈にあっている気がします。
by tooshiba (2010-11-15 11:55) 

とり

■tooshibaさん
仰る通りと思います。
補助金の使用は結局税金ですから、ばら撒きは考えものですよね。
まあ、ヒコーキは未だに特別な乗り物なので、ヒコーキにに対する敷居が低くなれば。
という意図はアリだと思いますけども。
>MRJがちょこちょこ飛ぶ。
そういう身の丈に合った使い方がよいと思います。
by とり (2010-11-16 18:01) 

コスト

>アメリカは鉄道が未発達
アメリカは自動車産業が力持ってて、ロビー活動しまくって
作った線路を引っぺがしたんですよ。
CMも「自由なアメリカには自由にどこでもいける車で、鉄道?駅に行って待つなんてダサいぜ」的なのを流しまくったそうですよ。

>国内に滑走路をたくさん建設するという約束
初めて知りましたーいろいろアメリカさんに得なるような約束してますよね^^;

大型機で一便だけだと日帰りできないですから、中・小型機で便数多いほうが
便利ですけど、羽田のパンクが理由にあったんですね。
by コスト (2010-11-21 23:16) 

とり

■コストさん
>引っぺがし
Σ(゚Д゚;)そんなことが! なんとも勿体ない話ですね。。。
日本だと駅を中心に町ができていくのが当たり前のようですけど、
アメリカではそれが駅でなく空港なのだと聞いたことあります。
>羽田のパンク
今回の再拡張分を計画通り国内線に大幅に使っていれば、相当改善したんでしょうけどね~。
あちらを立てればこちらが立たずですね~。
今までずっと内向きだった航空行政の大転換ではないかと。
by とり (2010-11-23 07:47) 

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